KYOTOGRAPHIE 2025|アートと思い出の境目を考えさせられた国際写真展の魅力

目次

仕事を通じて知った『KYOTOGRAPHIE』

赤い旗が目印

きっかけは、今の勤めている会社が仕事で少し関わっていたこと。
会社として取材する必要があり、招待券もいただいてたので行くことに。
とはいえ、そこまで強い関心があったわけではないので事務的な訪問になるかと思ったんですが……思いのほか展示を見ていくうちにどんどん惹きこまれていました。

ここでは、その中でも特に印象に残った3つの展示を紹介したいと思います。


KYOTOGRAPHIEとは?

KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)は、2013年から京都で毎年開催されている国際的な写真展。
京都市内各所の歴史的建造物やユニークな会場を舞台に、世界中の写真家による多様な作品が展示されます。
アート、ドキュメンタリー、ファッション、社会的メッセージ──そのすべてが混ざり合い、まさに”写真”というメディアの多面性を体験できるフェスティバルです。

印象に残った3つの展示(リンク付き+展示概要)

会場6|リー・シュルマン&オマー・ヴィクター・ディオプ

展示名:The Anonymous Project presents Being There

会場:嶋臺(しまだい)ギャラリー 東館


▶ 展示詳細(KYOTOGRAPHIE公式サイト)

展示概要: 「アノニマス・プロジェクト」を主宰するリー・シュルマンが収集した1950〜80年代の市民によるカラーフィルム写真に、セネガル出身のオマー・ヴィクター・ディオプが自身を合成し、アイデンティティと記憶をテーマに再構成したシリーズ。
時代・場所・人種を越えて、私たちが「家族写真」に感じる共通の情緒を引き出した作品。

当時の風景を再現した展示空間

鑑賞メモ

詳細も知らずにふらっと入った展示。
最初は「作者の回顧展かな」としみじみ見ていたのですが、最後にコラージュ制作風景の映像が流れ、一気に種明かしされました。
「あなた、合成なんかい!」と、心の中で思わずツッコミ(笑)。
ノスタルジックな写真が、実は現代の技術で再構成されたものだったという驚きと、そこに込められたユーモアを楽しめる展示でした。

オマー・ヴィクター・ディオプ(左)とリー・シュルマン(右)

会場8B|J.R.(ジェイアール)

展示名:JR 京都クロニクル2024

会場:京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡)

▶ 展示詳細(KYOTOGRAPHIE公式サイト)

鑑賞メモ

とにかく、まず圧倒的な“量”に驚かされます。
壁一面に並んだポートレート。
それぞれの表情やポーズは実在の人々のもので、数が多すぎるのについ一人ひとり見てしまう中毒性があります。
中盤では、実際に京都の仮設スタジオで撮影されている様子を収めたオフショットムービーも上映。
「作品」であると同時に、撮られた人にとってはかけがえのない「思い出」なのだと思うと、アートと記憶の境界に触れるような感覚でした。

金属の骨組みに取り付けられた巨大な写真作品前のエリアとは違う迫力がありました。

会場12|グラシエラ・イトゥルビデ

展示名: Graciela Iturbide
場所: 京都市美術館 別館
展示詳細(KYOTOGRAPHIE公式サイト)

展示概要: グラシエラ・イトゥルビデの作品は、モノクロームの世界を通じて、メキシコの先住民コミュニティや自然との共生を詩的に描き出しています。
彼女の写真には、砂漠の民、サポテカ族の女性たち、ムシェ(女装の男性)などが登場し、伝統や儀式、祭りを通じて力強い文化を伝えています。
また、鳥やヘビ、ヤギなどの動物をモチーフに、生と死のメタファーを織り込んだ作品も特徴的です。植物や石など自然物への敬意も感じられ、抽象的な写真表現の世界を確立しています。
本展は、彼女の60年にわたる作品を紹介する日本初の回顧展であり、彼女の独自の視点で捉えた世界を垣間見ることができます。

入り口には作者の年表

鑑賞メモ

年表とともに作品をたどる構成は、まるで一冊のアルバムをめくっているようでした。
作者の人生をダイジェストで追体験できる内容で、長年にわたる視線の深まりが伝わってきます。

身近な被写体であっても、彼女の写真には詩や小説のような余韻があり、ただの記録ではない「物語」を感じました。

そしてその引き込まれるのは「モノクロ写真である」ということも理由のひとつかなと。

色があっては伝わらないものが本展示作品にはあるように感じました。

写真と記憶のあいだで

12年の軌跡を辿る写真祭のストーリーをまとめた一冊【KYOTOGRAPHIE A Kyoto Story|十二支】

仕事の一環で訪れた展示でしたが、思いがけず多くのインスピレーションを受ける機会になりました。
特に印象に残ったのは、アート作品であると同時に、「誰かにとっての思い出の残し方」でもあるという点。

写真は記録でもあり、表現でもあり、そしてときにはだれかの「物語」でもあるということを感じる展示会でした。

12年の軌跡を振り返るスタッフのみなさん。この展示もが一つの物語なんですよね。

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